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多くの神経皮膚症候群の中で,Recklinghausen neu—rofibromatosis (NFと略す)と結節性硬化症(以下TSと略す)は,共に疾患として記載されすでに100年以上を経,共に比較的頻度の高い疾患である。近年,「TheElephant Man」の映画などによって, NFは社会的にも注目を集め始めている。しかしながら,これら2つの疾患の遺伝的原因はもとより,疾患全体のnatural his—toryすら十分にわかっていないのが現状である。この2つの疾患では,共に,症候が多種多様であり,またそのおのおのの軽重も著しく異点っていることが大きな問題となっている。従って,これらの疾患の発生を集団レベルで把握しその病因,病態に関写する要因を推察有るための疫学的データ,また家系内での伝搬を正確に把握し,病的遺伝子の浸透や,表現度に影響を与える要因を解析有るための臨床遺伝学的データも,豊富であるとは言えない。
また一方,これら2つの疾患は遺伝的に腫瘍を作りやすい疾患の1つであるが,他の多くの造腫瘍性遺伝病で種々の事実が明らかになり始めているのに対し,これら2つの疾患に関する基礎的研究は決して多いとは言えない。ただ少しずつではあるが,生化学的研究や,病的組織以外の細胞にも遺伝子が発現されているであろうという前提ですすめられている体細胞遺伝学,細胞生物学的研究によって,知見が得られ始めている。臨床症状の表現が多様であるこの2つの疾患で,臨床的,病理的に用いられている手段では発見できないような形質の発現(subclinical manifestation)を見出すことができれば,これらの疾患の病因,病態の解明に大きな手がかりを与えるだけでなく,出生前診断への応用も可能になる。
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