書評
日野原重明座談集 医療と医学教育の新しい展開
柴田 進
1
1川崎医科大学病院
pp.884-885
発行日 1983年9月1日
Published Date 1983/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205183
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日本の医療と医学教育には確かに良い面もあろうが,それよりずっとずっと広い大部分の領域に非能率的で効果のあがらない難問題が山積みにされている。この難問題が発火したのが15〜16年前の全国医科大学学生騒動であった。騒動のおさまったあと,各県1校を目標にして新設医大が建設され,今や我が国は新旧あわせて80校の医科大学を持つことになった。騒動以前に比べると医科大学の数は2倍になり,新設校の多くが医学教育の改善に努力し,新風を吹き込みつつある。しかし残念ながら,日本全体としては医療体制も医学教育の姿勢も概ね旧に復帰し非能率の病因は依然根強く残っている。
日野原重明氏は1951年渡米して臨床医学の修練を受け,英米の伝統的な医学教育の真髄に開眼され,その後頻繁に海外に出張し,世界各国の臨床家および医学研究者に多数の知己を持つに至った。その間,我が国における医療と,医学教育の改革が重大な問題であることを痛切に感じ,1972年(10年前)ライフプラニングセンターを東京に開設し,爾来毎年ここに英米から一流の医療従事者と医学教育者を多数招聘して新しい医学の動向を我が国に伝え,同時に自らも新設医大の建設に参画し,種々助言を提供している。この"医療と医学教育の新しい展開"は氏が主としてライフプラニングセンターを中心に推進した我が国の医学改革運動の集大成である。
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