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—日野原重明 著—「POS=The Problem-Oriented System医療と医学教育の革新のための新しいシステム」
柴田 進
1
1川崎医科大学内科
pp.76
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205304
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新しい病歴管理システムから医療革新の道を拓く
いらだたしい思いをさせられてきた従来のカルテ
こういってはいささか素直でないとそしりを受けるかもしれないが,正直なところ私は医科大学卒業後,心ならずも‘事情によって’内科医に仕立てられてしまったものである.したがって修業の最初から内科学——もっと広くいって臨床医学——を心のすみで批判の目で眺めてきたように思う.その一つが毎日患者を診察するたびごとに記入するカルテのことであった.これが一種の乱雑なメモにすぎないような気がしていた.
現在の保険診療は医療費を不当にやすく釘づけにし,ちょうど隊付軍医が受け持ちの1個中隊とか1個大隊の傷病兵を取り扱う時のように,患者を大量処理しないと医業がなりたたないように仕組まれているから,カルテなどまじめにつけていられたものではない——それは私にもよくわかる.しかし立派なカルテを作製するだけの時間を持っている医師が書いたものも,たいてい大同小異の雑駁なものである.なぜか?私にいわせれば,医師が科学者としての精神と態度をもって診療に臨まず,たんなる医者(薬を投与する人,なおす人)であることをもって満足しているからであろう.実は私自身それに気づいたのは,まことにはずかしいことであるが大変おそかった.
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