書評
—編集 J.R.Daude,B.A.Sandok,T.J.Reagan,B.F.Westmoreland,訳 大西 晃生(九州大学医学部脳研神経病理・神経内科講師),納 光弘(鹿児島大学医学部大3内科助教授),岡崎 春雄(メイヨー・クリニック,メイヨー医科大学神経病理教授)—臨床神経学の基礎—メイヨー医科大学教材
木下 真男
pp.862
発行日 1982年9月1日
Published Date 1982/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204995
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一昨年であったか,機会があって本書の原本をやはり書評の形で紹介したことがある。その折にも本書の良さは充分に述べたが,此の度その日本語版が刊行され,本書の教科書としての優秀性にあらためて感嘆している。同時に本書に着目され,邦語訳の労をとられた訳者の方々に敬意を表する。
本書は15章から成っているが,最初の5章までは解剖,発生の総論と,神経病理学,神経生理学の必要知識がまとめられ,6〜11章までは縦の神経系,すなわち機能別,系統別の神経機構の説明があり,それ以後は水平方向,つまり従来の局在診断的な視点から神経機構が取りあつかわれている。この,神経を縦の方向からと横の方向から眺めるという方法が神経機構をより容易に理解させるためのひとつの新しい説明法であり,筆者自身も従来から,縦(系統)の病気,横(場所)の病気というように神経疾患を分けて考える思考法をとってきた立場から,本書にきわめて親近感を抱くものである。また,各章の終りにはそれぞれの章に適した臨床関連問題が附属しており,観念的になりがちな勉強の気分転換と,臨床医学への興味を呼び起こす手段として成功している。勉強というのは必ずしも面白いものではなく,努力して気力をこめてむずかしい書物を読破することはもちろん必要なことであるが,要領よく教えてもらって頭に入れば,その方が楽であり,そしてまたその内容が充分高度なものであればそれに越したことはない。そうした意味で本書は神経学関係の書籍のうちでもきわめて成功したものの部類に入ると思われる。
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