書評
—Edited by Jasper R. Daube, Burton A. Sandok, Thomas J. Reagan & Barbara F. Westmoreland—Medical Neurosciences
木下 真男
1
1東邦大学
pp.487
発行日 1980年5月1日
Published Date 1980/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204582
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- 文献概要
本書は本来Mayo医科大学の学生に対する神経科学教育カリキュラムのために編集されたものである。一読してその内容の広汎とそれが平易に手際よくまとめられている点に感心するが,さらにこのカリキュラムが決して高度な医学研究の推進や専門医の育成にあるのではなく,単に有能な臨床家を育成するためにあることに思い至つて,さらに感を深くするものである。つまり,ただ普通に神経疾患の患者を診療するにも,これだけのことが頭の中に人つていなければいけないというminimalrequirementとしてのレベルの高さに感服させられるわけである。
本書は三部より成り,第I部では神経科学の基礎的まとめとして,神経発生学,解剖学,病理学,生理学から直接に臨床に関連する項目の抜すいと解説があり,しかも各章末にはそこに述べられた知識だけで解決可能な臨床問題が幾つか並べられている。そして第II部,第III部では神経系を縦に見る考え方と,横に見る考え方がそれぞれまとめられており,神経学をこうした2つの観点からまとめたのが従来の成書では見られなかつた本書の特徴である。縦とは,単純な物理的な縦ではなく,機能のつながりとしての系統別の各組織の追求であり,一方横とは同じ構造内での各系統のまとめである。
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