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あとがき
塚塚 廣
pp.197
発行日 1982年2月1日
Published Date 1982/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204901
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近頃大学の自室の窓ぎわに鉢植えの植物を並べている。はじめは余りに乱雑で殺風景な机の上を何とかごまかそうと赤い花をつけたゼラニウムをおいてみたのがきつかけで,何時の間にか鉢の数がふえて今では分不相応なランの鉢まで並ぶようになつた。当然の結果として植物の世話が大変である。毎朝水をやるだけではすまず,枯れた葉の整理,害虫の駆除,よごれた鉢のまわりの掃除などいろいろと仕事がでてくる。正月休みなどでも水がきれはしまいかと心配でおちおち休んではいられない。相手が物言わぬ植物で,何の要求もしないだけあわれであり,せつせと世話をすることになる。
一方現代の人間社会では告発が盛んなようである。先日地方の某病院長からきいた話であるが,ベッド数が数百床のその病院で食中毒が発生した時,おびただしい告発の投書が病院内は勿論,病院外にも寄せられ,地方の報道機関だけでなく中央の行政機関にまで及んで,事後処理に苦慮したという。告発と同時に自己主張も盛んなようであり,自分の意見を率直に表明する若い人がふえていることは喜ぶべきであろう。しかしひかえ目で積極的な発言はせず,真面目に人生を生きてゆこうと努力している人も少なくないように思われる。
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