Japanese
English
総説
松果体の形態学
Morphology of the pineal organ
和氣 健二郎
1
Kenjiro Wake
1
1東京医科歯科大学医学部第一解剖学教室
1Department of Anatomy,Faculty of Medicine,Tokyo Medical and Dental University
pp.655-667
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204607
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
脊椎動物の進化は,松果体の機能を光受容から内分泌へと変化させた。その過程で魚類の副松果体,両生類の前頭器官,さらに爬虫類の「第3の目」,すなわち頭頂眼など,松果体の「兄弟たち」は新生,廃絶の運命をたどるが,松果体そのものは器官として存続しつつ,いわば,「内なる変革」を遂げる。その変革は,松果体細胞のレベルで進行する。下等脊椎動物の松果体細胞(実質細胞)は,網膜の錐体型の外節をもつ光受容細胞(感覚細胞)であるが,哺乳類に到ると光との直接的な関係を断ち,神経系を介する間接的な光入力をホルモン出力に変換する光神経内分泌細胞となる。松果体を,光信号を受け,「精気」(ホルモン)を脳室系を介して体内へ送り出す弁と考えた哲学者ルネ・デカルト(1596〜1650年)の仮説は,現代の松果体の理解と遠くかけ離れてはいない(図1)。
このように系統発生学的に刻々変化する松果体は,生体のなかでもきわめて不安定な器官とも言えよう。それがゆえに,感覚細胞と内分泌細胞との各々の細胞構造の重複,器官内部域差,発生と加齢に伴う構造の変遷,神経支配の交代現象,日周リズムなど形態学の好刻象となるさまざまの興味ある現象が,松果体には充ちあふれているのである。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.