Japanese
English
総説
歩行のメカニズム
The Mechanism of Locomotion
森 茂美
1
Shigemi Mori
1
1旭川医科大学生理学第二講座
1Department of Physiology II,Asahikawa Medical College
pp.1151-1167
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204325
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I.はじめに
歩行運動に際して四肢および躯幹の大多数の筋は,それぞれ協調して目的に適つた活動をする。それゆえ歩行は自発運動の中でも最も複雑なものの一つと考えられる。また筋活動は一般に神経活動をそのまま反映しているから,中枢神経系のかなりの部分も歩行に際して,協調活動をしているものとみなされる。これら神経・筋活動によつてなされる協調運動は規則的な周期運動,すなわち肢位の変化が一定の順序fixed orderで進み,そしてそれらが再び初めから繰り返される特徴をもつている。したがつて歩行は自発運動というよりも自動運動であり,それがスムーズに行われるのは運動を形成している各要素が巧みに協調しているから,いいかえると制御されているからである。
このような観点からみると,生体には歩行の自動制御機構automatic control system for locomotionが組みこまれている。そして中枢神経系が,歩行の開始・停止および歩行中の各要素の働きを巧みに協調させる制御部分controllerであり,筋骨格系はそれからの命令を忠実に実行する効果器もしくは制御をうけるシステムcontrolled systemに相当する。したがつて歩行メカニズムの本態を解析しようとする場合,①中枢神経系のどの部分にどのような制御中枢があるかを同定しようとする行き方と54,60,89,105),②制御機構からの最終出力である四肢の動きを力学的立場から解析し,筋骨格系にどのような命令あるいは制御信号が送りこまれているかをうかがおうとする17,26,29,106),二つの代表的な手法が用いられる。
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