書評
—M. G. Netsky & S. Shuangshoti 著—The Choroid Plexus in Health and Disease
竹下 研三
1
1鳥取大学脳神経小児科
pp.1234
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203973
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Choroid plexusのみを取りあつかつた本はわが国はもちろん,外国においても非常に少ない。かつて髄液の分泌器官としてのみ理解されていたchoroid plexusに関する研究がこれほどまでに進歩しているのかと驚かされる。分泌様式における特異なパターン,逆に吸収機構としての機能は,臨床でしばしば経験する脳スキャンニングでのアイソトープ集積像や,脈絡膜出血などに対する理解を深めさせる。この本はchoroid plexusの発生,解剖,生理,組織化学などの基礎的知見を豊富な写真(約200図)によつて主として人間のそれを中心にまとめられている。過去の知見が乏しいだけにその多くは最近の知見の集積である。前半の基礎編(正常編)に対し,後半は疾病編がつづくが,外傷,中毒,代謝異常,感染,腫瘍,奇形などについて,それぞれのchoroidplexusの状態が記述されている。とくに,腫瘍の項は多く,脳室内腫瘍として独立して読んでもいいくらい充実したものである。
われわれにとつてもつとも参考になるのはやはり前半の正常編であるが,ここでのchoroid plexusは脈絡膜上皮細胞,血管組織,結合組織を含む統合されたものとしての位置づけがなされている。これは臨床家にとつて非常に理解しやすい。
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