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カラーアトラス
中枢神経系の初期発生—I.神経管形成と神経発生の第I期
The Primitive Genesis of the Central Nervous System (Part 1)
服部 隆則
1
,
藤田 哲也
1
Takanori Hattori
1
,
Setsuya Fujita
1
1京都府立医科大学病理学教室
1Department of Pathology Kyoto Prefectural University of Medicine
pp.6-11
発行日 1976年1月1日
Published Date 1976/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203825
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はじめに
非常に複雑な構造をしている脊椎動物の中枢神経系がどのようにして発生してくるかということについては19世紀以来特に多くの人々の関心が集まり,多数の研究が行われてきた。これら先人の研究によつて,ヒトをふくむすべての脊椎動物の中枢神経系発生は本質的に極めて類似した一連の過程で遂行されることが明らかになつている。脊椎動物の中枢神経系の発生は,外胚葉から神経板が誘導されることで開始される。その後,神経管が形成され神経管の各部で膨出が始まり,神経管壁のそれぞれの部位で種々の細胞の分化がおこり,大きさと厚さを増していくことによつて発生が進行していく。
神経板がいかに形を変じて複雑な成体の中枢神経系を形成していくかというマクロ的な観察は十分なされているといえる。しかしながら神経管がどのようなメカニズムで閉じるのか,またどのようにして神経管壁が生長し脳の各部位に特殊化していくのか,などと問われたら,私達はこれらの疑問には未だ正確には答えられないのである。一方,このマクロ的な発生学とは別に中枢神経系の構成成分であるニューロンやグリア系細胞が,いっどのようにして発生してくるかという問題を扱つた細胞発生学的研究は近年急速に進展してきた。細胞発生学的研究は3H-thymidine autoradiography1〜3)やcytophoto—metry4)の導入といつた研究手段の進歩で一段と発達したのである。これらの方法は今まで静的に観察してきた細胞や組織の性質を動的にとらえることを可能にしたのであつた。
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