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はじめに
脊椎動物における神経系組織の起源を形態的に辿ると,嚢胚期の外胚葉にまで遡ることができる。嚢胚期というのは受精に始まる胚発生の経過中,卵割期,胞胚期に続く発生段階で,その初期に開始される形態形成運動の結果,外,中,内,3胚葉の体制が確立されることにより特徴づけられる。外胚葉は嚢胚期後その部域により,すなわち胚体制内での相対的位置により,3つの異なる発生系統を辿る。しかし神経系の発生という見方からすれば,以下に述べるように,そのいずれの系統も多かれ少なかれ神経組織の構築に寄与することが知られている1)。3系統のうち第1は,胚の背方に当たる外胚葉部域に出来するもので,嚢胚期に続く発生段階で神経板(図1A;Neural plate)として形態的に識別することができる。神経板はその後,神経管(図1C;Neural tube)へと形態変化し,最終的には中枢神経系の大部分を構築することになる(本稿では,以下神経管系統とよぶ)。第2の系統は上記背方外胚葉の周縁部に由来するもので,最初神経板を縁どる神経堤として識別でき(図1A;Neural fold),これはのちに神経冠(図1C;Neural crest)として神経管とは独立した構造をとり,最終的には末梢神経節や色素細胞などに分化する(以下,神経冠系統とよぶ)。
神経管および神経冠系統の発生機構については,Spemann学派による胚葉片移植を中心とした実験発生学的研究により,背方外胚葉を裏打ちする背方中胚葉(図1A;Dorsal mesoderm)の作用によることが明らかにされ,“神経誘導”として知られている2)。背方外胚葉部域を背方中胚葉と接触する前に胚から分離して培養すると,側-腹方外胚葉部域の場合と同様表皮に分化することから,外胚葉一般は自律的には,すなわち,それ自身に内在する発生制御機構のみの働きによれば,表皮系への発生系統を辿ると思われる。しかしそこに背方中胚葉から何らかの働きかけがあると,外胚葉における自律的な表皮系統発生は抑制され,かわりに神経管あるいは神経冠系統の発生が促進されると考えられる。しかし“神経誘導”現象が最初に報告されてから3)既に半世紀以上経過し,多くの実験が積み重ねられてきたにもかかわらず,外胚葉の発生系統にこのような変換をもたらす中,外胚葉細胞間作用の本態,より端的にいえば,“神経誘導”信号がいかにして中胚葉細胞から外胚葉細胞に伝達されるのか,また“神経誘導”信号を担うべき物質の化学的本体について,今日に至るまで明確な解答は得られていない4)。さらに神経管,神経冠両系統の分離については,これまであまり注意が払われてこなかったこともあり,やはり満足のいく説明は与えられていなかった。
In spite of intensive research after the discovery of the neural induction, it is still not known how the inducing signal (s) is transmitted from mesoderm to ectoderm cells, nor what the nature of this signal is. Much less attention has been given to the question of the separation of the neural crest and neural tube lineages. We have developed a microculture system of early gastrula cells from Xenopus laevis in which the autonomous differentiation of epidermal and muscular lineages proceed from cells of the ventral ectoderm (VE, prospective epidermis region) and marginal zone (MZ, prospective mesoderm region), respectively.
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