書評
—草間 敏夫・中沢 恒幸 編—神経の変性と再生—その基礎と応用
佐野 圭司
1
1東京大学
pp.1175
発行日 1975年11月1日
Published Date 1975/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203798
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神経の変性と再生は神経科学の基礎方面を研究するものにとつても,また臨床方面にたずさわるものにとつても,もつとも重要なしかもむずかしい問題のひとつである。臨床家にとつては末梢神経の再生—神経端の吻合という手段によつて—はさほど困難な問題ではないが,中枢神経の再生となるとまず不可能といつてよいほどの難問題である。本書と同じ題名の古典的名著がS.Ra—món y Cajalにあるが(1968年その英語版の再生版が出版されている),それ以外には同種の著書を見ないのはこの間題の困難さによると思われる。
本書は33名の一流の研究者の執筆になり,序を含めて23章からなつている。第1章は中枢神経系の細胞発生をあつかい神経管のmatrixcellからいかにして中枢神経系の諸細胞が分化して行くかが要領よくまとめられてある。第2章の興奮膜の発生は,生理学的立場から見た膜の興奮性の発達を述べてあり,第3章シナプス分化は神経細胞の突起がいかにしてシナプスを形成して行くかを詳述している。第4章中枢神経系の発生生化学は中枢神系発生の基盤にある生化学的所見を述べている。第5章神経変性の形態などはがらりと変つてwaller変性や逆行変性の形態学的面を論じ,第6章はまかような変性時の組織化などを述べている。第7章は神経病変の際のグリア反応を詳述している。
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