書評
—D.H.Ford 著—Neurobiological Aspects of Maturation and Aging:Progress in Brain Research Vol.40
藤澤 浩四郎
1
1東京都神経科学総合研究所神経病理学研究室
pp.394
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203691
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加齢現象の研究は,その現象の性質上からも派手に脚光を浴びることはないのだが,極めて重要であつて,近年着実に進歩し,神経生物学の領域の中でも徐々に地歩を占めて来つつある。将来はもつと重要になるだろう。本書は,その副題に示されているとおり,国際精神神経内分泌学会(Intemational Society ofPsychoneuroendocrinology)が主催して1972年6月ニューヨークでもたれたシンポジウムの記録である。収められている報告は全部で35篇,内20篇が生化学的研究,5篇が発達に関係した形態学的研究,3篇が病理学的研究であつた。またとりあつかつているテーマ別にすると,発達と成熟の問題に25篇,加齢の問題に19篇が触れている。
先ず本書の編者であるD.H.Ford(ニューヨーク州立大学解剖学教室)が冒頭に,出生後ラット脳の成熟に関するこれまでの業績を総説的に紹介している:神経細胞の絶対数は胎生期に決定されるわけであるが,神経細胞の成熟過程は出生後も続き,これは形態的には細胞突起の発達という形式をとるわけであるから,neuropilの増加を意味し,従つて出生後神経細胞の組織内密度は逆に低下することになる。その他グリア細胞の密度,脳内含水量,細胞外腔などの変動,蛋白質・DNA・RNAあるいはGABA-transaminaseなどの酵素の成熟に伴う変化の問題にも触れられている。
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