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Ⅱ.老人班
A)老人斑(Senile Plaque)
1892年Blocq & Marinesco98)により最初に記載された構造で,Alzheimerの原線維変化(A変化)よりもより脳の老化過程に密着していると考えられ,生前痴呆の認められなかった"正常"老人,老年痴呆,Alzheimer病,中年以後のDown症候群31)などに認められ,またNew Guineaの原住民Fore族にみられるKuruにも"Kuru pla—que"112)といわれるある面では類似の構造が認められる。猪瀬28)によると一般老人脳の平均で22%,Matsuyama et al47)の正常人の統計では40歳台ですでに2.2%,80歳台で68%に認められる。A変化より出現頻度はひくい。老人斑は一般に灰白質に分布し(まれに白質にも),"正常"老人ではその出現は海馬,傍海馬回などにかぎられ,その数も少いが,老人痴呆,Alzheimer病などではそれ以外に全大脳皮質,扁桃核などに多数,広範に形成される。まれに基底核,視床下部,脳幹部,小脳にも認められる111,121)。またA変化と共存することも多いが老人斑のみの場合もある。ヒト以外ではサル50,93),イヌ87,93,124)に報告があるが実験的に動物に作製することには未だ成功していない。
老人斑は鍍銀染色により最もよく認めることが出来,その形態により3つに分けられている。すなわち,1)typical plaque.中心のアミロイドのcoreとこれをとりまく無構造のhalo様の部分と,さらにこれを環(冠)状にかこむ多数の強い嗜銀性のrodあるいはfilament状の構造よりなる(Fig.23)。Congo red染色で放射状のアミロイド線維が染め出され(Fig.24),扁光下で重屈折性を示す。2) primitive plaque.中心核が認められなく,時に中心部分も嗜銀性のrodまたはfilamentでしめられる(Fig.21)。3) compact plaque.アミロイドのcoreのみよりなる。時に少数の嗜銀性のrodをともなう(Fig.23)。そして老人斑はグリア染色により星膠細胞,小膠細胞の関与あるいは脂肪顆粒細胞の存在が認められる。
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