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IV.顆粒空胞変性
A)顆粒空胞変性(Granulovacuolar degenera—tion of Simchowicz)
顆粒空胞変性は,老人斑,Alzheimerの原線維変化(A変化)と共に脳の老化をあらわす構造と考えられ,これらと共に形成されることが多く,特に老人,老人痴呆,Alzheimer病,中年後のDown症候群などに海馬のSommer's sectorの錐体細胞に比較的限局して形成される(より広範な分布例は武谷121)を参照)。老人斑を一般にともなわないParkinsonism-dementia complex22),progre—ssive supranuclear palsy71),Pick病などにもみられる。この神経細胞の特異な変性はvan Bogaert &Bertrand161)によると最初にAlzheimerにより観察され,後の1911年にSimchowicz157)により老人痴呆脳で記載されgrobkörnige Degenerationと命名された。H-E染色(Fig.55)と鍍銀染色(Figs.54 & 56)で認めることが出来,神経細胞の胞体の中に5μまでの大小の空胞が形成され,この中にヘマトキシリン好性あるいは強い嗜銀性の小顆粒がふくまれる。1つのニューロンの中に1個あるいは数個の場合や,より多数の形成がみられ胞体もやや腫大し核が偏在している場合もみられる。Bodian標本では空胞がはつきりしない場合もあるが,OsO4 固定,Epon包埋の1μ切片では空胞形成は明らかであり,顆粒はトルイジン・ブルーによく染る(Figs.57 & 58)。しかしこの顆粒はその他の組織化学的染色に反応しないため現在その化学的組成は全くわかつておらず28,151,154),その意義や形成過程は明らかでない。
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