- 有料閲覧
- 文献概要
LSD使用者に"trailing"とよばれる現象があり,認知異常として,動いている物体が不連続discreteの像のつながりに見える,或はストロボで何回も照らし出すと残像がのこるような現象がある。長い間LSDを用いていると著明でAsher(Am.J.Psych.127:1233,1971)のいうようにneurochemical mech—anismにもとづくのであろう。Rosenthal (Am. J. Psych. 121:238,1968)によるとmultiple, re—peatedにLSDを与えた時に多く出る。19歳black seaman, LSD長期使用の副作用で,1971.Aug.24来院。1970年の1年に65回以上hallucinogenを用いた。最近は1カ月前である。主訴はtrailingで,日中につよく,集中すると強化するという。その他症状はoccasionalflashes of light, hallucination,transcient feeling of unreality。患者は精神清明,着服キチンとしており感情も豊かであつた。幻覚作用はtrailingだけである。最近の記憶記銘確実。内省,判断力あり。Trifluo—perazine hydrochloride 2 mg,1日2回,7日投与。最初の2日はtrail—ingが増強したが,その後だんだんtrailing消失,flash back持続。つついて第2回のTrifl.療法,全治。これでLSDのtrailingは他のflashbackとは別であることを知る。flash of light, spatial distortionなどは挿話的で,不安その他でひきおこされ,phenothiazineの影響をうけない。これに反しtrailingは挿話的でなくconstantで,誘発因子は現在の動体であろう。Trifl.が奏効するのもflashbackなどとメカニズムが違うのであろう。Trifl.がtrailingに何%ぐらいの頻度で有効か今後の検討に俟ちたい。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.