書評
—西村 謙一 著—頭部外傷治療の実際
藤田 五郎
1
1自衛隊衛生学校
pp.778
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203146
- 有料閲覧
- 文献概要
1年間に2万人足らずも発生する交通事故死者のうちで,頭部外傷患者は約60〜70%をしめているといわれる。1昨年,WHOは世界中で発生している交通事故死のうちでその約20%の患者は,受傷直後5分以内における取扱いが適切であつたならば救命することができたということを発表している事実に注目したい。我が国における交通事故の頭部外傷の死者が,約1万人であるならば,2千人あまりの患者は救命できた数であると推定されるわけである。しかもそれは"最初の5分間の取扱い処置が適切であるとしたら"ということの条件を忘れてはならないと思う。京都大学の荒木千里博士は地道に長い間にわたつて頭部外傷の研究をしてこられたけれどもそのような,研究の積み重ねが,脳神経生理学や外傷学の進歩と相まつて,今日の脳神経外科の進歩発展を来たしたように思う。
このたび,九州大学脳神経外科の西村謙一博士が,「頭部外傷治療の実際」一救急処置かウリハビリテーションまで一を著わされたのを手にして,この書がこのような意味合で,今後,医療の世界に果たしていく役割りの大きいものがあると直感した。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.