書評
Nikolai Bogduk, Lance T.Twomey 著 四宮謙一 訳―腰椎の臨床解剖
岩倉 博光
1
1帝京大学医学部リハビリテーション部
pp.925
発行日 1989年12月10日
Published Date 1989/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106174
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腰痛の治療には各国で予想以上に多額の治療費を費やしている.たいていの成人が,短期間にせよ腰痛を経験しており,中には慢性化するものが少なくない.ところが,多数の臨床家が承知しているごとく,この腰痛の原因を探り,病理を明らかにしたり,正確な臨床解剖学的および機能的診断をくだすことは極めて困難である.
腰痛の原因の大半(約90%)は,腰椎部に存在すると考えられている.その椎体は周囲の筋群によって支持され,各椎体間には後部に多数の靱帯があるほか,前縦靱帯や後縦靱帯が椎体と椎間板の前後と付着する.痛みはこれらのいずれの靱帯や骨膜からも生じるし,また椎間関節(滑膜関節)からも発生しうる.筋肉や椎間板周囲の血管に分布する神経や,馬尾から出る神経根の圧迫も,もちろん腰痛の原因となりうる.多数の研究者がこの問題の基礎的研究に取り組み,ようやく近年に至り腰椎部の生理と病理の知見が増加したために,腰痛の謎が徐々に解明されつつある.
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