書評
—西村 謙一 著—頭部外傷治療の実際—救急処置からリハビリテーションまで
大野 恒男
1
1関東労災病院
pp.405
発行日 1973年4月1日
Published Date 1973/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203301
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非常にユニークな書である。頭部外傷にっいての成書は内外を問わず相当の数にのぼり,かっわれわれが日常座右において参考としたい書物も多い。しかし私には,本書のように徹底的に,一人の患者が病院に運び込まれてから後,社会復帰を果たす迄の診断と治療の方法を順を追って詳細に,同時にわかり易く述べられた書物を読んだ経験はなかった。学問としての頭部外傷・脳損傷が,実際の臨床医学においてこのように巧みにまとめられ,実地診療に直ちに役立つ形として提供されたことは,著者の日頃の学問研鑽の深さと臨床家としての経験の豊かさとによるものだけでなく,その底に一人一人の患者とそれらの家族達に対する愛情が支えとなつて初めて可能であったろうと思う。
次に本書に特徴的な点を2,3挙げてみよう。先づ外傷患者の搬入された場合の取扱いの点では,心マッサージにまで記述がなされ,また診断書の書き方などmedica-legalな点にも詳しく触れられている。レントゲン検査の項目では,撮影条件にまで説明がなされていて,これ一冊で誰れにでも迅速な診断がおこなわれるであろう。急性期のベッドサイドの治療についても,輸液の適正な使用方法,人工呼吸器の取扱い方など全くあます所なく述べられている。
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