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I.はじめに
てんかんの治療は,phenobarbital (Hauptrnann, 1912)によつて始まり,diphenylhydantoin (Merritt & Putnam, 1938)の発見とそれにひき続く1940年代の抗てんかん剤の出現によつて,今日の治療体系の基礎はほぼきずかれたとみることができる。それ以後今日まで,種々の抗てんかん剤が合成されてきたが,現在,わが国で常用されている抗てんかん剤の数は三十数種類にものぼつている。しかしながら,このような抗てんかん剤の発達と治療の進歩にもかかわらず,乳幼児期に特異的にみられるinfan—tile spasmsに対してはこれらの薬物もきわめて無力である。infantile spasmsはmassive myoclonic seizure, Blitz-Nick-Salaam-Krampfe, Propulsiv-Petit Mal,点頭てんかんともいわれる発作で,その発作が難治性であるばかりでなく,患者に精神発達の遅滞を伴うことが多いという特徴を有し,予後がきわめて不良なものである。この発作に対しては通常の抗てんかん剤では十分な効果を期待することができない。このようなわけで,1958年Sorelらがこれに対してACTHの投与を試み,良い効果をみたと報告し,さらにLow1), Stampsら2),福山ら3)によつてその有効性が確認されて以来,ACTH療法がinfantile spasmsの治療の主役をなしてきた。しかし,この治療法とてもこの発作に対して圧倒的な効果を示すわけではなく,しばしば効果が一過性であつたり,無効におわるものがある。このような状況において,数年来,精神安定剤chlordiazepoxide, diazepamと類似の構造を有するnitrazepamがこの発作の治療に試みられ,その効果が報告されてきた4)−10)。nitrazepamは,化学名を1, 3—dihydro−7—nitro−5—pheny1-2H−1, 4—ben—zodiazepin−2—oneといい,第1図のような化学構造を有する。ところで,最近わが国にも本剤が睡眠導入剤Ne1—bon (三共),Benzalin (塩野義)として紹介されたので,著者らは本剤をinfantile spasmsを中心としたてんかん患者に対して使用し,その効果を検討したので報告する。
The authors reported about experiences with Nitra-zepam in the treatment of 29 epileptics, including 12 cases of infantile spasms. The drug was very effective for 6 cases (50%) of infantile spasms : with complete control of spasms in 3 cases and with 90% or more reduction in number of them in 3 cases, while the medication was relatively ineffective against epilepsies except infantile spasms. In 2 of 5 cases with infantile spasms unresponsive to ACTH, spasms were considerably well controlled.
As side-effects, sleepiness and ataxia were observed in cases for whom the drug was given in combination with conventional antiepileptic drugs.
It was concluded that Nitrazepam was an epoch-making drug in the treatment of infantile spasms.
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