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VI. Pathognomonic diseasesその3
5.胎児性筋細胞に類似の筋線維myotubular myopathy
筋線維は胎生期5カ月頃までにほぼ完全に形成されるのが普通である。その発生過程にはpremyoblast→myoblast→myotube→muscle fiberの順で名称がつけられている。正常人の筋中には特別の場合を除いてはmuscle fiberと呼ばれる形態のみが存在し,それ以前の発生途上に見られる形態は見られない。しかしながらSpiroら75)は9歳の少年の生検筋中に多数のmyotubeと思われる所見を得たのでこれをmyotubular myopa—thyと命名して報告した。症例は生後より筋の発育が悪く,次第に進行して歩行などが困難となつてきた。報告時には両側眼瞼下垂,外眼筋運動障害,軽い咬筋萎弱,両側顔面神経麻痺,胸鎖乳突筋萎弱などの脳神経支配領域の運動の障害が著明で,加えて全身の四肢筋,躯幹筋の筋力低下が認められた。筋生検は9歳時と12歳時の2回にわたつて行なわれ,いずれの場合にも類似の所見が得られている。すなわち筋線維の多くは横断面上中央部になんらの物質も存在しない部分を有し,報告者はこれをclear areaと呼んでいる。時にはその部に核を一箇認め,あるいはPAS陽性物質を認めることもあるが,myofibrilは存在しない(第28図)。この所見は縦断面でも確認することができ,artifactではない。12歳時に行なつた生検では凍結標本も作られており,それを用いた組織化学ではこのclear areaにoxidative enzy—meの活性が亢進している場合と低下している場合とがある。またmodified Gomori trichrome, PAS, amylo—phosphorylaseも同様にclear areaでは異常に亢進か低下を示している。同時に行なわれた電子顕微鏡ではmi—tochondriaの変性に由来すると思われるmyelin figureを認めている。
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