書評
—Mayo Clinic神経学・生理学部門著 黒岩義五郎訳—神経学的検査法
椿 忠雄
1
1新潟大学
pp.1047
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202298
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神経病の検査法ないし診断学に関する本は訳書も含めて,すでにわが国でも数種類出版されている。検査法や診断学の本は比較的類型にはまりやすく,独特の味が出にくいのであるが,それにもかかわらずこのMayo ClinicのClinical Exami—nations in Neurologyがわが国に紹介されたとき,この本のすぐれた特異性は識者の注目をあびた。このことは,その後にわが国に現われた神経学の書物には本書に準拠したと思われるものがいくつかあることによつても明らかである。
それでは本書にどのような特徴があるかということになるが,まず本書は特定の個人の著書ではない。多数の人々の合作である。これが単なる分担執筆としてではなく,融和された1つの体系をもつた検査法となつているのである。このことは,神経学の検査が個人の医師によるのではなく,多くの人々の綜合判定による場合大きな意味をもつてくる。メーヨークリニックではこのようなかたちで診療が行なわれ,長い間の経験を積んだ後このような洗練された検査法とその記録法が完成されたわけであるが,このことでは第II章の「病歴および臨床検査成績記載の各種の書式の使い方」に集約されている。一口にいえばすべてが実際的である。検査法というもの自身実際的でなければならないが,従来ともすれば理論的体系に流れすぎる記述が多かつたのに対し,本書は実際に便利で有用な記述法,誰が見ても誰が書いても同じようにできる記述法が採用されている。検査法自体も同様実際的である。
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