書評
—黒岩 義五郎・近藤 喜代太郎 編—神経疫学
福山 幸夫
1
1東京女子医科大学
pp.970
発行日 1977年9月1日
Published Date 1977/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204129
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神経疫学は比較的新しく発達してきた学問の領域である。疫学的手法,たとえば全人口,集団の中で,ある疾患をながめ,ある人口集団中における罹病性などを取り扱う手法が,ある疾患の実態を明らかにするのに必須であるだけでなく,しばしば原因究明への手掛りになることが,近年ようやく認識されるようになつた。それにはアメリカのKurland博士およびその一門の神経疫学者の研究が,よいお手本となつた。グワム島における運動ニューロン疾患の研究では,この疫学的観察が基礎となつて,スローウイルス感染症という全く新しい発生病理に基づくことが解明されるきつかけになつた。
わが国においても,すでに昭和32年から昭和35年にかけて,札幌,新潟,福岡,熊本の4都市で,冲中重雄先生を中心とした研究班が,多発性硬化症の有病率調査を行なつた。これが,多分一つのモデルとなつて,本格的な神経疫学的研究が,各種の神経疾患に対して実施されるようになつた。
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