書評
—森 昌彦著—腫瘍酵素組織化学
小野 哲生
1
1癌研究所
pp.969
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202286
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腫瘍にかぎらず,一般に病理の研究が形態学的記載考察にとどまらずさらに組織細胞の機能物質代謝の面に眼を向けだしてきた。一方生化学の側でも単に酵素の動力学や物質代謝の経路を知るだけでなく,病理学の要請する問題点に手をのばそうとしている。しかしこの両者の協力がにわかに実現しないのは,従来の両者の立場があまりにも相違していて,共通の場がないことによるとみることができる。生化学ではある臓器に,ある酵素活性があり,癌になると変化することはみられるが,病理組織学ではどの種類の細胞に含まれる酵索で,どの種類の細胞から癌が発生しているかが問題となる。ここに酵素の組織化学が必要となってくるのは必然的なものである。
われわれは本書により,各種の腫瘍により酵素の存在様式に差異のあること,さらに一種類の癌についても細胞ごとに個性差のあることを教えられる。
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