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自動車事故などの頭部外傷で,数週から数年,まつたく意識を失い,看護面でも家庭面でも厄介きわまる例がある。こうした長い期間の昏睡者でZotlan (III. Internat. Cong. Neurol.Surg. 1965)は下オリーブ核,橋に損傷があるとし,大脳皮質には挫裂創を見,昏睡の原因は天幕上および下の損傷の総和で,単に脳幹部損傷にのみ基づくのではあるまいとしている。そこで著者はロンドンSt.George Hosp.で,外傷俊2週から19ヵ月の昏睡の後死亡した9例(2〜55歳),外傷後dementia (7週〜32ヵ月)3例の脳を精査した。病変は2型にわけられ,脳型(視床および上部),脳幹型(下視床核および下部)で,その変化は主にびまん性脱髄で,Strich (Lancet 2:443,1961)が外傷後dementiaについてはじめて記載したところに一致する。その結果encephalolysisとなり,白質が広く消失し,脳室拡大,血管周囲拡大する。皮質の挫裂創はすでに陳旧化し黄色になつている。阻血巣は白質内で嚢胞様空洞・限局性瘢痕となり,はじめの出血量に応じて黄の色素沈着を示した。neuronophagiaは外傷より長い経過の後にも見出される。脱髄に伴つてその下行性大線維索にWaller変性があつた。長期昏睡9例すべてにこうした性状の原発病変が脳幹にみられ,dementiaではわずか1例にのみ見られ,また阻血性変化がdementiaにはなかつた。そこで長期昏睡はsubthalamusからcau—dal ponsの間の脱髄・阻血性病変に伴うという結論になる。Rossi (Ex—cerpta med. 93:117,1965)は間脳あるいは鼻側中脳直上のsubthala—mic cegion損傷に基づくとし,Hal—sey (J. Neurol. Neurosurg. Psych.29:350,1966)は橋,中脳の損傷によるとしている。
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