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I.緒言
パーキンソン症候群の病態生理についてはいまなお不明の点が多く,また治療の困難なものの1つであるが,近年錐体外路系疾患にたいする神経生理学的解析の進歩,また生化学的研究には注目すべきものがあり,また臨床面においても定位脳手術による運動症状にたいする外科的治療はもつとも期待されるものであろう5)。しかしなお,抗パーキンソン氏病薬物のもつ価値はきわめて重要であり,ことに本病が運動症状以外の数多くの症状を示すことから考えれば,薬物治療のもつ意味は十分に考慮されねばならないし,さらに定位脳手術がきわめて有効であつても,多くはそれは身体1側にたいしてであり,術後も抗パーキンソン薬の使用が必要であることはしばしば経験されるところである。薬物療法それ自体も対症療法の域を脱していないが,従来用いられてきた主なものとしてはアトロピン,スコポラミンなどのアルカロイドをはじめとして近年ではアミノプロパノール誘導体のアーテン,ケマドリン,アキネトン,フェノチアジン誘導体のパーキンなどの副交感神経遮断剤やヂパルコールなどが用いられている。さらに補助的治療剤として交感神経刺激剤(アンフェタミン),抗ヒスタミン剤,筋弛緩剤(ベナドリール,マイアネシン,ソラキシン),セルシン,コントール,ルミナールなど多数あつて,それぞれ一応の効果は示すものであるが,多くの場合併用療法が必要であることが多い。症状の進行にともなつて増量の必要のあること,有効量の使用でしばしばおもわしくない副作用を示すこと,またいずれの薬物によつても十分な効果をあげえない症例の多いことも日常の経験である。しかし日常の臨床において薬物による治療がなお重要な位置を占め,従来用いられている薬剤の他につねにさらに有力な薬剤の出現が望まれている。Dr. A. Wander, AG社製のパーキンソン症候群治療剤Tremari1(SJ—1977)は化学的にはphenothiazineとよく似た化学構造をもつthioxantheneの誘導体で,第1図のごとき構造を有しており,薬理作用としてパーキンソン病類似の症状を誘発するtremorinの拮抗剤で中枢性鎮痙作用,副交感神経遮断作用,抗ヒスタミン作用を有している。本剤がパーキンソン症候群にたいして有効であることは数多くの海外文献1)2)3)6)8)にみられるところである。われわれは今回東京田辺製薬株式会社よりTremarilの提供をうけたので,その臨床成績の一部を報告し,錐体外路系疾患にたいする治療の参考に供したいと思う。
The paper deals with the clinical effects of 9 (1'-methyl-piperidine-3'-methyl)-thioxanthene hydro-chloride (Tremaril), a new thioxanthene derivative, in 23 patients of extrapyramidal disorders : 17 parkinso-nians and each one of torsion dystonia, essential tremor, Benedikt's syndrom, Ramsay-Hunt's syndrom, Postencephalitic cerebellar ataxia and phenothiazine parkinsonism.
Observation was made mostly by using Schwab's Parkinson evaluation sheet and the following results are obtained. In 13 of the Parkinsonian cases, effects were observed to the various degree in reducing tremor, rigidity and some autonomic disturbances, such as hypersalivation or hyperhidrosis. 4 were not changed at all. However, even in the well improved cases, akinesia and the psychic symptom were not well influenced.
In 3 cases of essential tremor, Benedikt's syndrom and phenothiazine parkinsonism effect was relative. There was observed no effect in 3 cases with torsion dystonia, Ramsay-Hunt's syndrom and postencepha-litic cerebellar ataxia.
The side-effects of Tremaril were seen in 6 of 23 medicated cases (26%) and the main side-effects in these were a slight drop of the blood pressure, constipation, tiredness, a dry feeling in the mouth, tinnitus and blurred vision.
Tremaril may be considered as a drug of choice for some extrapyramidal symptoms.
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