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最近各学会でそれぞれ「認定医」なるものを作ろうという機運がある。すでに小児科学会はそういう制度を作つたし,内科学会も精神神経学会も,神経学会も,脳神経外科学会も外科学会もその準備をはじめている。これはもちろん米国のSpecialistの制度をまねているのである。ところでわが国の専門医の制度を作ろうという人々の中には学会制定の認定医にはあきたらずすぐにも国家が制定する専門医にしようと考えている人もあるようであるし,また専門医を作ればその専門の診療科はその専門医以外はやつてはいけないように考えている人もあるようである。
しからば肝心の米国の制度はどうであろうか。実に米国には(米国のみでなく世界中のどの文明諸国でも)国家が制定する専門医制度なるものは存在しないのである。米国には18のSpecialty Boards (麻酔科,結直腸外科,皮膚科,内科,脳神経外科,産婦人科,眼科,整形外科,耳鼻咽喉科,病理,小児科,理学療法リハビリテーション,形成外科,予防医学,精神神経科,放射線科,外科,泌尿器科)と一つのAffiliate Board (胸部外科—これは外科にaffiliateしていて,外科のBoardをとつてから2年してはじめて受験資格を生ずる)があるが,これらはいずれもそれぞれの学会が主体となって作つた法人であつて国家はまつたく関与していないのである。またこれらBoardsはそれぞれの専門の訓練を向上させ,その科の水準を上げるのを目的としているのであって,なんらの法的の資格や特権を賦与するものではないと明記してある。すなわちBoardsはそれを持たない医師のprofessional activitiesを制限したり,干渉したりはしないと書かれているのである。
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