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錐体路系の解剖学的知見は従来Marchi法にもとついた2)。この方法は変性した有髄線維(ミエリンを含む)を染めるには十分である。しかし錐体路は小さなミエリンを含んだ多くの細い線維と無髄線維(ミエリンを含んでいない)とから成り立つているのでMarchi法は錐体路の経路を追究するには不適当である17)。また線維終末前の分枝はミエリンを少ししか含んでいないか,あるいはまつたく含んでいないのでMarchi法はこれらの分枝を染めだすには適しない。一方Cajalの鍍銀法によつて錐体路系の皮質脊髄線維がサルの脊髄灰白質にどのように分布しているかが研究されている9)10)。しかしこの方法は軸索を染めだすが正常線維も変性線維も両方とも染めるので解釈がむずかしくなる。最近,変性した軸索だけを選択的に染めるNauta法28)が発見され,この方法によつてはじめて皮質脊髄経路や線維終末分枝が明らかとなつた3)4)16)。Nauta法によつてはじめて錐体路系と感覚系の相関の解剖学的基礎が得られたといつても過言ではない。
延髄の錐体を下行する線維を錐体路系とするのが本来の定義である。この中に脊髄の後角中心部や延髄の後索核と三叉神経終止核などの体制感覚系の中継核に終止する線維が含まれていることは一般に認められている13)。草間,大谷,川名(1965)15)によるとやはりこの中継核の一つである視床後腹側核への投射は起始や体部位局在の見地から延髄以下の中継核への投射と同一カテゴリーに入れることができるといい,これらの投射をcortico—sensoneuronal fibersと総称している。また島津ら(19—65)32),は視床後腹側核への投射には錐体の線維の軸索側枝があることを証明した。視床後腹側核への投射は延髄の錐体を形成しないから錐体路本来の定義にてらすと錐体路のなかには入らない。しかし広義に解すると錐体路の中に含めてさしつかえないと考えられる。このcortico—sensoneuronal fibersの起始部は大脳皮質体制感覚領野であることは草間らにより解剖学的に明らかにされている。このように錐体路系は昔からよく知られている運動系に対する働き以外に体制感覚中継核にも投射線維を送り体制感覚統御を行なつていることが考えられる(第1図)。
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