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1.錐体路の起始細胞
大脳皮質における錐体路の起始は,古くは大脳半球のいわゆる運動中枢で,ことにその第5層にあるBetz細胞から出ているといわれてきたが,錐体路の線維数は大脳皮質に存在するBetz細胞の数よりも遙かに多く,Betz細胞のみが錐体路の起始細胞でないことは明らかであり,第3層および第5層に存在するBetz細胞以外の大きな錐体細胞からも線維が起こつていると考えられている。近年電気生理学の飛躍的な進歩により,従来主として形態学的方法により研究されてきた錐体路も生理学的な追求が可能となり,ことに微小電極法の発見以来この方面の知識も飛躍的に増加した。
すでに変性法により,錐体路は4野(運動領)のみならず,6野(前運動領),3-1−2野(知覚領)からも起こつていることが報告されていたが11),WoolseyとChang(1948)24)によりまつたく新しい解明のみちが開かれた。彼らはウサギ,ネコおよびサルの延髄錐体を逆方向性に刺激し,皮質表面から活動電位を記録し中心前運動皮質と頭頂葉全体,すなわちサルではBrodmannの6, 4, 3—1-2, 5および7野を含む広い範囲より電位変動を記録しこれらの部位より錐体路が起こつていると結論した。その後Landau (1956)16),JabburとTowe (1961)13)ら,Woolsey24)らにより記録された逆行性の活動電位には錐体路の近傍を通る求心性伝導路(内側毛帯)刺激による求心性の活動電位が混在していたことが明らかにされたが,これらの結果を参照しても錐体路は4野以外の広い部分からも起こつていることは明らかである。Betz細胞を含めたこれらの,錐体路に直接線維を送つている皮質錐体細胞は現在新しく錐体路細胞2),と呼ばれるようになつた。
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