Japanese
English
総説
ヒトの錐体路
The Pyramidal Tract in Man
岩坪 威
1
,
金光 晟
2
Takeshi Iwatsubo
1
,
Akira Kanemitsu
2
1東京大学薬学部機能病態学教室
2東京大学医学部脳研究施設脳解剖部門
1Department of Neuropathology and Neuroscience, Faculty of Pharmaceutical Sciences, University of Tokyo
2Department of Neuro-anatomy, Institute of Brain Research, School of Medicine, University of Tokyo
キーワード:
pyramidal tract
,
Nebelflecke
,
extrapyramidal system
Keyword:
pyramidal tract
,
Nebelflecke
,
extrapyramidal system
pp.21-37
発行日 1993年1月1日
Published Date 1993/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900428
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
延髄錐体の命名者はフランスの解剖学者Vieussens(1685)92)(イギリスの医学者willis(1664)ともいう)126),錐体側索路・前索路の命名者はオーストリアの神経学者Turck(1851)134),大脳運動野の巨大錐体細胞Riesenpyramidenの記述者はロシヤの解剖学者Betz(1874)7)といわれる。したがって,錐体路は延髄錐体を通る線維束というほどの意味らしい。Türck(1851)134)は大脳に病変のあるヒト症例で,内包後脚,大脳脚底部中央部,橋縦束,錐体,対側脊髄側索背側部(Pyramiden-Seitenstrangbahnと命名),同側前索内側縁(Hülsen-Vorderstrangbahnと命名,Türck束とよぶことがある)に小型顆粒細胞の増加(今日でいうグリア細胞増殖症gliosisを指す。ちなみにgliaはVirchow 1856の造語)を観察し,大脳からの下行性線維束の変性と解釈した。もっとも,錐体路の起始としては大脳基底核を想像したらしい。ちなみに,イギリスの生理学者Wallerによるカエルの脳神経切断による二次変性現象の発見はl850年である139)。
錐体路は哺乳類になって出現し,ヒトで最も発達した伝導路で,上部頸髄断面積の30%を占める。後索も動物の階梯とともに発達する構造物で,ヒトでは上部頸髄断面積の25%強を占める。錐体路は伝導路のうちでも最も早くから注目された82)。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.