連載 神経病理アトラス・17
脳脊髄の病理(その3)—脳脊髄の梅毒
武谷 止孝
1
1九大精神科
pp.1076-1089
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201938
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1.梅毒性病変
神経系にかぎらず,一般に,臓器梅毒の病変は,病理組織学的に,1)特殊肉芽炎,2)非特殊炎,の2つの形で現われる。前者は限局性肉芽腫形成である。この肉芽腫はいうまでもなくゴム腫であつて,梅毒に特有である。後者は慢性間質性炎であつて,組織像だけからは,必ずしも梅毒に特有とは言えない。
この2形式の病変は,肝臓を例にとると,いちばんわかりやすい。肝臓に鶏卵大時にはそれ以上の大きいゴム腫が生じることは,よく知られている(もつとも,今では治療の進歩によつて,昔のように肝臓ゴム腫を見ることはほとんどなくなつた)。もうひとつは間質性肝炎である。これによつていわゆる梅毒性肝硬変(分葉肝,Hepar lobatum)が生じる。われわれがよく見る梅毒性大動脈中膜炎(Mes—aortitis syphilitica)の組織像は,非特殊炎のことが多いが,時に小ゴム腫を確認することもある。先天梅毒児に多い梅毒性骨・軟骨炎(Osteochondritis syphilitica)も,その組織像は非特殊性である。
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