海外だより
アメリカとニュー・イングランド医学界(4)
畠中 坦
1,2,3
Hirochi Hatanaka
1,2,3
1東京大学医学部脳神経外科
2Havard大学医学部
3Massachusetts General Hospital神経外科教室
3Neurosurgical Service, Massachustts Generl Hospital
pp.742-743
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201887
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Transcervicaltranselival approachについて
コロンブスの卵の話ではないが,学問が普及してくると,誰しも考えつくことは似たようなことばかりになつて,脳幹の腹側部に到達する新しい方法として最近注目をあびている「(経頸部)経斜台法(Transcervical—transclival approach)」もその例外ではない。
昨年の夏以来,マサチューセッツ総合病院神経外科に東北大学からおみえになつている古和田博士が脳無酸症の実験のため兎の脳底面から入つて脳底動脈を結紮しておられるが,兎では少なくとも,比較的容易に到達できる。「人間でもこの到達法で簡単に入れるはずですね」などと,私と古和田先生が話をしていたのだが,自国にいない悲しさで人体で試みることができぬ脾肉の嘆をかこつているうちに,今春のHarvey Cushing Societyで,カリフォルニア大学のDr. Stevensonという若い人が,人体でchordomaの手術に成功した1例の報告を行なつた。この人もかねがねresearch fellowとして動物で脳血行の実験のために脳底に孔をあけていたのが人体への応用の端緒になつたというから,まさしく人間の考えることは同じようなものである。もつとも彼は33屍体について試したというから立派なものである。また,海外の神経外科医にも意見を徴したというから,かなり謙虚な学究でもあるのだろう。
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