連載 神経病理アトラス・9
原発痴呆の病理
辻山 義光
1
1慶大神経科
pp.1052-1059
発行日 1964年12月1日
Published Date 1964/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201749
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老人痴呆とAlzheimer病
老人痴呆とAlzheimer病の異同については,まだ一定の見解はない。両者の独立性を認めるものは,Alzheimer病は初老期に発病し,人格は比較的よく保たれているにもかかわらず,巣症状として空間失見当,特有な歩行,姿態異常,言語障害(とくに言語間代,Logoklonie)を示し,組織病理学的におびただしい老人斑と原線維変化を有するものとしている。Kraepelinは同一病因によるものであるが,早期かつ重篤に経過するものがAlzheimer病であるとし,MarchandはGowersのAbiotrophieなる概念を容認し,老人痴呆,Alzheimer病,Pick病をEncephalaseなる概念のなかに包括した。Sjögrenによれば,老人斑,原線維変化の形成がある閾域をこえるとAlzheimer病の臨床病状を呈するという(threshold phenomena)。
特異なものとして,Alzheimer病と診断されたもので,原線維変化だけが見られ,老人斑を欠くものがある。また老年期に発病し,失語失行,失認,Akinese,Parkinsonismus,てんかん発作を示しながら老人斑も原線維変化も見ないものもある(Sjögren 1950,Sjögren & Sourander 1961, Atrophia cerebri simplex)。
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