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特集 知能とその障害
小児科学の立場から・1
染色体研究の立場よりみた知能障害
Cytogenetic Aspects of Mental Retardation
中込 弥男
1
Yasuo Nakagome
1
1東京大学医学部小児科
1Dept. of Pediatrics, Faculty of Med. Univ. of Tokyo
pp.739-743
発行日 1964年9月1日
Published Date 1964/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201700
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はじめに
1959年Lejeune1)はDown症候群(蒙古症)3例の染色体分析を行ない,全列にもつとも小型の端部着糸型染色体が1コ過剰にみられることを発見した。これは多くの追試により確認されてすでに教科書的な事項となつているが2)3),ヒトにも染色体異常が存在し得ること,またそれが精神薄弱の原因となることを示した点で画期的な業績であつた。その後現在までに染色体異常に基づく疾患6種が知られているが4),注目すべきことはDown症候群以外の染色体異常が意外に高頻度にみられDown症候群よりもむしろ多くの症例に日常われわれが接していると考えられる事実である5)。
これらの疾患には知能障害がほとんど必発であるにもかかわらず,あるものは従来その身体的奇形のみに注目されていたため知能障害についての検索が不十分であつたし,またあるものはいちじるしい身体症状を示さないために染色体異常に気づかれず単純な精神薄弱として分類されていた。本稿ではそうした点を念頭におきながら精神薄弱の原因探求におけるapproachのひとつの手段としての染色体研究の現況を概観してみるつもりである。
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