小児の診察
知能
高橋 種昭
1
1愛育研究所
pp.650-651
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204745
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ダイナミックに,全人格的に考えよう
知能の定義については学者の数ほどある,といわれるほどいろいろのことがいわれている,そして,従来はややもすれば知能を,思考・判断推理など人間のみがもつ高等度精神能力を知能としたり,学習に関する能力のみを知能とするような傾向が強かった.戦前につくられ,現在でも乳幼児の知能テストに用いられている愛育研究所の乳幼児精神発達検査法においても,知的能力を,生産的思考,学習,知覚というような,各種の能力に分けて考えるやり方がとられている.
もちろん現在でも,知能というものをいくつかの要素に分けて考えることは行なわれており,それなりの利点も存在するわけである.表1はWISCと呼ばれる知能テストの結果の整理表であるが,この場合にも,知識,理解,記憶などに分かれて,その総合によってIQを出すようになっている.しかしながら,このように知能というものを考えた場合,いろいろな矛盾にぶつかることも事実である.たとえば,こうしたいくつもの能力の中で,1つだけずばぬけて優秀だが他の能力は低いというような場合,その子どもの知能というものをどのように評価すればよいか,というような問題も生じてくるわけである.一部のものに対する記憶とか,数に対する能力だけは素晴らしくよいが他はダメ,という例など精薄児や問題児の中にしばしばみられる例である.
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