書評
—中井準之助編—Morphology of Neuroglia
津崎 孝道
1
1横浜市立大学
pp.716-717
発行日 1963年7月1日
Published Date 1963/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201510
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- 文献概要
本書は神経膠研究班の諸学者が緊密な関連のもとに研究した結果を,中井教授が編集し,最近,英文で医学書院から出版せられたものである。
今日まで,ノイロンは形態学的にも,生理学的にもまた生化学的にも,広汎にかつ奥深く検索せられているのにかかわらず,神経膠はノイロンの影にかくされていたような感が深い。しかし,脳皮質では神経膠細胞が数量においてノイロンをしのいでいるということは,膠細胞がノイロンの機能遂行上,きわめて重要な役割を演ずるものであらねばならぬと解せられるのであるから,われわれはノイロンの周囲,すなわち神経膠にも眼を転ずる必要がある。中枢神経系においては,膠細胞は特殊の手段でノイロンを包被し,末梢神経系では,神経節細胞は外套細胞で,神経線維はSchwann細胞でとりかこまれている。このようにノイロンは,それがどこに存在していようとも,特殊に分化した外胚葉原性細胞,すなわち膠細胞によつて保護せられ,これを隔てて毛細血管と接触しているので,blood brain barrierの問題などは,神経膠の機能を明らかにした上でないと解決され得ない。換言すれば,神経膠はノイロンに関する疑問の解決の鍵を握つているのである。かのような立脚点から,神経膠研究班の諸氏は,この神経膠というすばらしいテーマの研究に精進し,その結果を本書として刊行されたのである。
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