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はじめに
一般に視床特殊核を経る誘発電位は皮質表面から単極誘導すると,基本的には1〜数個の陽性スパイク電位とこれに部分的に重畳して陽相を長びかせる緩電位,そして引続いての陰性緩電位からなつている。ここで各成分の対応する神経要素を考えてみると,はじめのスパイク群については及川教授の話されたようにその発火源を細胞のレベルで追求することが可能なことが示されている。これに反し陽性—陰性の緩成分については皮質の細胞構築の知識の上にたち,種々の実験操作を施し,さらに思考実験等によつてその発生源およびその経路が考察されているがそれは推測の域にとどまつている。その理由は皮質の構造が複雑であること,対象とする緩電位が多くの神経要素の同期した活動に由来するため細胞のレベルでの基本的な電気生理学知見を直接応用できないところにあると思われる。この点に関しては荒木教授の述べられた集合電位を扱う際の注意すべき諸注意は心にとめておく必要がある。
ここで誘発電位の最後の成分,表面陰性波についてみると,これは一応apical dendriteの表層部の活動だと考える人が多い。そしてこれは皮質増強電位(unspecific recruiting response)の陰性電位や皮質直接誘発電位(direct cortical response, DCR)についても同様に考えられている。この説に反対する人もいるが,Shollのいうように皮質の神経要素の膜表面積中apical dendriteの占めるそれが非常に多くしかも表層ではさらに多く,ここには無数といつてよいほどのシナプスが存在することを考えればapical dendriteが電位発生に相当関与しているはずである。ではapical dendriteに由来するとされた電位の性質はどうか?となると俄然研究者により意見の不一致をみる。これはひとつに実験条件の不統一が解釈されるべき実験結果に多様さをもたらしたものと思われ将来十分検討されねばならぬが,われわれも数年この仕事に関係してきたのでここで一応の結論を,他の研究者の考えを参照しながら簡単に述べたい。
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