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一般に蜘網膜下出血といえばひとつの症状であり,そのよつてきたる原因の追及が必要なことはいうまでもない。それには脳血管写が第一義的なものである。外傷性のもの,あるいは炎症性のものを除いては動脈瘤の破綻によるものが主役を演ずることは今日異論がない。Hemangiomaや他の腫瘍性のものは出血も慢性,微量であるために,動脈瘤破綻に原因する蜘網膜下出血のごとく急性の生命の破局的な事態になることは少くない。札幌医科大学での調査では,第1, 2表のごとく,内科入院患者で腰椎穿刺により髄液中に出血を認めた患者(これらは脳血管写を行なつていない)の年令分布および各種症状と,脳外科において髄液中出血を認め,脳血管写の結果,明らかに動脈瘤,あるいはHemangiomaなどの他の腫瘤によるものとの,初発症状を比較すると,年令・症状においてきわめて類似性を示している。このことはこの内科症例の中には多くの動脈瘤やHe—mangiomaなどが含まれていることを示唆する。われわれの分類では,蜘網下出血(脳動脈破綻性のもの)による疾病経過を第3表のように考えておりこの経過中に脳血管写を行なう安全,妥当な時期としてB群,C群をもつて適応性ありと考え,出血後2週間前後がよいと思考している。高齢者で動脈硬化を伴なつている症例にはopen-methodで注意深く血管写を行なう必要がある。わが教室で行なつた動脈瘤手術は(第4表)のごとくである。今日脳動脈瘤の手術は低体温麻酔を用いて脳血行を一時的に遮断して比較的安全に行なわれつつあるが,現在なお動脈瘤の位置および性質によりかならずしもいかなる症例にもその頸部にclipをかけるという訳には行かない状態である。その意味において半田氏の補強物質の研究はきわめて興味のあるものであり,今後の研究の進歩を祈つてやまない。
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