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われわれは,昭和32年以降神戸医大神経科を訪ずれた閉鎖性頭部外傷患者約2,000名のうち,外傷による明らかな器質性精神障害あるいは人格障害の認められた33例の患者を観察した。その気脳写と精神症状の関連性を考察したので,ここに簡単に述べる。患者は20歳から50歳までの男子32名,女子1名である。気脳術は,腰椎穿刺にて,酸素50ないし60ccを注入したのち,30分から1時間の間に一定の撮映条件のもとに撮影したものである。撮影の時期は受傷後6か月以上,平均1年を経過したもので,気脳写に影響をおよぼし得る疾患を既往歴,遺伝歴に認めたいものについて行なつた。おれおれは,臨床症状群を脳病理学的立場から,次のごとく分け(第1表),いわゆる前頭葉症候群では,行為面における発動性の欠乏,無関心さ,情動面においては,上気嫌,不快気分,感情鈍麻等がめだつものである。痴呆は一応IQ80以下と規定した。健忘症候群は,記銘障害,逆行健忘,失見当のみられたものである。その他の精神障害のなかには,病前性格の強調されたもの,精神病様症状主として分裂病様症状を呈するものが含まれている。この際Hirnleistungsschwächeといわれるようなvege—tativな自覚症状が強く,精神症状が動揺するものは除外してある。33例中気脳写正常は5例である。側脳室の変化のめだつものは8例で(第1図a, b),側脳室の変化に加えて第三脳室の変化のみられるのは,第2図a, bのごとくであり,16例にみられる。その他の変化として,脳室の変化の他にZyste様の,空気貯溜像を,第3図のごとく後頭部,第4図のごとく前頭部あたりにみられるものがある。あるいは,再三の試みにもかかわらず,一側ないし両側とも,空気の入らなかつたものを併せて,4例が含まれている。これらを精神症状よりみると,いわゆる前頭葉症候群をみるものは19例であり,前頭葉症候群に加えて,痴呆をみるもの5例,健忘症候群4例,また病前性格強調化,分裂病症状をみるもの5例である。これら精神症状を気脳写との関連においてみると,第2表のごとくになる。
結論として,いわゆる前頭葉症候群に関しては,側脳室の前角の拡大のめだつものが,その症状を示していることは事実であるが,それ以外に病変があつても,やはり強い前頭葉症候群を示すものもある。
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