Japanese
English
展望
頭部外傷後遺症の臨床
The Chronic Stage of Head Injury
後藤 彰夫
1
A. Goto
1
1同愛記念病院精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Dōai Memorial Hospital
pp.411-421
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200231
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Ⅰ.まえがき
頭部外傷後遺症はきわめて広範な問題を含んでいるが,臨床精神医学の立場からは,主として,閉鎖性頭部外傷の亜急性期ないし慢性期すなわち後遺症がもつとも重要である。とくに,頭痛そのたがんこな病訴を主とする後遺症患者の診断と治療については,神経症との鑑別など,理論面でも実際面でもこんにちなお多くの問題点を残していることは周知のとおりである。近来交通事故や労務災害などにより頭部外傷患者が増加する傾向があることと考えあわせると,頭部外傷後遺症の臨床面の研究にはさらに多くの関心がはらわるべきものと思われる。
私は,昭和32年より自衛隊の空挺降下訓練時の頭部外傷患者を対象として閉鎖性頭部外傷の後遺症について詳しく観察する機会をえ,すでにその結果を発表した85)。今回は,とくに当時参考としえた諸家の論文をもとにしてこの問題の展望をこころみることにする。関係する領域が広くかつ複雑であるので,内容を主として閉鎖性頭部外傷のいわゆるdas cerebrale Allgemeinsyndromならびに精神症状にかぎり,巣症状そのほか多くの興味ある問題にはふれえなかつたことをおことわりしておきたい。
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