Japanese
English
外科の焦点
頭部外傷と後遺症
Craniocerebral injury and posttraumatic disorder
中村 紀夫
1
Norio NAKAMURA
1
1東京大学医学部脳神経外科
pp.1191-1198
発行日 1966年9月20日
Published Date 1966/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204080
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はじめに
頭に外傷を受けたあと,すでに一ヵ月以上たつているのに,なお頭痛・嘔気・めまい・耳鳴などいろいろな自覚症状に悩んでいる人々が,いかに大勢いることであろう.現在東大病院脳神経外科外来には,一日平均十数名の頭(頸)部外傷患者が新患として来院するが,その大部分は後遺症を訴えている.このような患者を診察すると,およそ3種類の者が目につく.第1に頭部外傷の急性期には他医で診察治療を受けているが,慢性期に入つてあまり治療されないで,また十分な説明も受けないまま,医師および予後に対する不安の念から大学を訪れる不安型,第2に急性期に診療した医師が,慢性期になつて専門医を受診することをすすめ,紹介状を持参する紹介型,第3に補償問題がからんでいて,専門医による治療と予後判断を求めてくる補償型である.
この中でことに第1型の患者に接すると,第一線の外科医がこのような慢性期の患者の治療に苦心し難渋していることを感ずるとともに,患者に対する説明が不十分であると,患者の不安が増大し,主訴を一層複雑にする傾向を認めるのである.
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