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最近頭部外傷の患者がしだいに増加し,それに伴つて頭部外傷後,かなり長期間にわたつて種々の自覚症状を訴えるが,神経学的に明らかな他覚所見はまつたくないという患者が増加している。このような患者は,いわゆる機能的疾患,すなわち神経症や心因性反応との区別もつきがたく,とり扱いに困つてしまう場合も少なくない。われわれとしては,このような患者群に対して種々の検査を行なつて,なにか陽性の所見を得るように努力するわけである。今回は,このような患者群について,脳波検索を行なつた結果を報告する。患者は過去約3年間にわれわれの教室を訪ずれた頭部外傷後遺症の患者のうち,神経学的異常所見のまつたくないもの,てんかん様の発作的異常を訴えないものの二つの点を満す患者86名につき検査した。
この患者群の年令分布は,第1表のとおりである。外傷の程度の一面を示すと思われる外傷直後の意識消失時間を示すと第2表のとおりである。また外傷より脳波検査までの期間は,第3表に示した。この患者群の自覚的な訴えについては,むしろ不定なのがひとつの特徴かもしれないが,かなり不定である。主な訴えを一応列記してみると,第4表のごとくである。脳波記録には21電極法を,いわゆるroutine methodにより安静時記録および3分間の過呼吸賦活の所見について検索した。薬物刺激による賦活については,ここでは触れない。結果を先に述べると,第5表に示すとおりである。すなわち徐波群が27例,α波異常が18例,速波群が4例,arseau波が6例になつている。二つ以上の異常所見を示したものは,それぞれに算入してあるので,総計86例中異常所見を示したもの49例,約57%になつている。このうちα波の異常というのは,振幅の左右不対称とか,周波数の減少,あるいは連続度の明らかな不良などである。
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