Japanese
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特集 脳の生理
〔4〕動物の状態と脳の電気活動—イヌの海馬の電気活動を中心として
PHYSIOLOGICAL STATES OF THE ANIMAL AND ELECTRICAL ACTIVITY OF THE BRAIN
島薗 安雄
1
Yasuo Shimazono
1
1金沢大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Kanazawa Univ. School of Medicine
pp.561-566
発行日 1962年7月1日
Published Date 1962/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201281
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小池上教授と中尾助教授の御講演は内容的にはかなり違つているが,共に,脳の形態と機能の関係を,より正確かつ精密に解明しようとしておられる点で共通点があるように思う。形態と機能の関係は脳の生理学のもつとも重要な問題のひとつであり,私自身も深い関心をもつているが,そういう問題をねらって電気生理的な実験をやつていると,形態と生理学的な現象を結びつける前に思わぬところでひつかかることがたびたびある。というのは同じような実験をやつていても,脳の電気現象がそのときどきによつて変つた現われ方をすることが少なくない。これをどういうふうに解釈しようかと考えているうちに,次にまた予想外のことが起こるというわけで,要するに解剖的な関係と機能を結びつける場合には,そういう機能の不安定さというものをよほど慎重にみてから結びつけないと問題をかえつて複雑にし,いたずらにたくさんの説を生む結果になる。私は最近海馬を中心とした領域にみられる規則正しいθ波の連続,いわゆる海馬覚醒波をめやすにして脳の働らぎをみているが,この実験をしながら以上このことを痛感しているので,もつぱらその方面について述べてみたい。
GreenとArduiniの論文(1954)の図では,大脳の新皮質がいわゆる低振幅速波波型を示しているときに,海馬では規則正しいθ波の連続がみられている。この仕事があらわれていらい,この海馬の波は一般に「海馬覚醒波」と呼ばれ,もつぱら覚醒状態のときにでるというふうに考えられてきた。
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