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われわれは,動物が刺激をうけとり,それに応じてひとっの行動をする際に,皮質下の部分がそれぞれどのような働らきをしているのかという神経機構を調べることを研究の目標にしている。現在このような行動の神経機構に関しては,脳幹網様系や辺縁系等を主なものとして,かなり詳しくわかつてきているとはいえるけれども,これらのいろいろな報告を比べてみると,同じ部位について,同じようなことを調べた実験でも,その結果が一致していない場合があり,中には正反対の結果が得られ,まだ結論がでないという問題もある。このような場合,一方が正しくて一方が誤つているとは,かならずしもいえないと思う。いうまでもなく,脳の機能は複雑で,かつ,柔軟な融通のきく面もあり,さらに無麻酔の動物では,それぞれ反応に個体差が加わり,わずかな実験法の差,観察時間のずれ,あるいは実験の対象としている脳部位のわずかなちがいによつて,まつたく同じことを研究しているつもりであつても,脳機能の異なつた而を観察している可能性が少なくない。したがつてこのような結果を集めてきて,これらを統一的に理解しようとしても,それぞれの結果が異なつた基準から得られたものであれば,その比較検討が難しくなる。
そこでわれわれの研究の方針として,脳の各部位について,同じ実験法,同じ観察基準で実験をし,得られた結果の部位的差を調べると共に,実験法を変えた場合,同じ部位にでてくる結果のちがいをも比較して,各部位の行動において果たす役割りを検討するという方法をとつている。現在,各部位について,実験の進みぐあいも不ぞろいで,全般的に検討するという段階までにはいたつていないが,今まで得られた結果を述べてみたい。
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