Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
さまざまの脳疾患で低Na血症を見る。これは尿細管のNa再吸収傷害またはACTH分泌障害によるといわれている。また副腎機能は正常で上部尿細管の再吸収が障害されているともいう。著者はADH分泌異常による低Na血症2例を報じている。47歳家婦,乳癌の脳転移,昏迷・指南力喪失で癌転移と思われ開頭,血清Nal21mEq/l。高張食塩水注でごく一過性に血清濃度が回復するにすぎない。Na最低105となる。尿Naは20-60mEq/24hで,とくにsalt wastageというのではない。尿量は少ない。40歳男,脳外傷おそらく底骨折,3日後幻覚あり,昏迷状となる。血清Na124,高張食塩水注で血清Na一過性に改善,症状一時的に軽快。7日後から5カ月水・Naを検し,Na喪失に基づくのでなく,ADH分泌亢進で低Na血症となることを確めた。ADH分泌の亢進は,正常人のように循環量・血液滲透圧にほとんど左右されていない。それで低Na血症を治療するには水分を厳に制限するほかない。第2例はのちに血液量に反応してADH分泌が変化しうるようになつたが,滲透圧には反応しなかつた。第2例は初期に,高張食塩水でも低Na血症が回復しにくかつた。与えられた食塩は正常者より早く多く排泄されていた。これは8〜9日つついたから,その間はrenal salt wast—ageといつてよい状態も加わつていた。以上のような変化はvasopre—ssin注で実験的に作成することもできる。また肺癌で同様の状態を呈したという報告もある。水分貯留でアルドステロン分泌が抑制され,その間Na wastageがおこると見ることができる。もうひとつ腎糸球体の濾過量が亢進していることも低Na血症の一因になるか。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.