今月の主題 水と電解質
電解質異常の実際
高Na,低Na血症
野中 達也
1
,
清水 倉一
1
Tatsuya Nonaka
1
,
Kurakazu Shimizu
1
1東京大学医学部・第1内科
pp.720-723
発行日 1983年5月10日
Published Date 1983/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218256
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血清浸透圧(Na濃度)と体液量
血清ナトリウム(Na)濃度の異常は細胞外液のバランスの乱れを示唆する一徴候である.低Na血症や高Na血症を呈する疾患では,Na・水代謝系という2つの系の変動の総合的結果として細胞外液の浸透圧異常(Na濃度異常)や細胞外液量異常が現れるのである.大切なのは同じ低Na血症(または高Na血症)でありながら細胞外液量については増加・不変・減少の種々の場合があり,低(高)Na血症すなわち体内Na欠乏(過剰)とはいえない点にある.つまり,血清Na濃度自体は必ずしも体内総Na量を反映せず,体内総水分量との相対的増減を示す指標にすぎない.一般に血清Na濃度は次式に示すごとく,Nae,Ke,TBWの3者の相関で決まることが知られている1).
血清Na濃度∝Nae+Ke/TBW
Nae:体内交換性Na量,Ke:体内交換性K量,
TBW:体水分量
図にいくつかの疾患における体囚総Na量と総水分量の変動を,正常との比較において概念的,便宜的に示す(正しくは,前述のようにNae+KeとTBWを比較すべきである.たとえばNaeとTBWが正常でもKeが減少すれば低Na血症となりうる).体内総Na量と総水分量の大小関係が血清Na濃度に反映するが,各疾患によりそれらの絶対値が大幅に異なることが明らかであろう.体内Na量の増減を査定することは重要であり,それがそのまま鑑別診断や輸液方針につながる.
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