書評
—Priv.-Doz. Dr. M. Klingler著—Das. Schädelhirntrauma : Laitfaden der Diagnostik und Therapie
所 安夫
1
1東京大学医学部病理学教室
pp.894
発行日 1961年11月1日
Published Date 1961/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201145
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頭蓋及び脳外傷が外傷の中で占める意義は,交通事故や職業事故の急激なる増加を思うまでもなく,その社会医学的な多方面への関聯の中にあつて,予想以上に豊富であり且は複雑である。完全な設備を具えた病院のみにたいする要請であつていいわけはなく,いかなる僻地の外科医家にとつても,この課題はたえず緊急必須の内容をなすに間違いない。手頃な,要をえた,実地のゆたかな経験にもとづくその方面の書籍は,あらゆる医学分野は勿論,外科の専門家にかくことが出来ない。こうした情勢下の現在において,このたびその道の最高権威たるスイスはバーゼル大学クリングレル博士によつて公表された「頭蓋脳外傷」の一冊は,最も時宜に適した新しいものという意味を別にしてもその長所は実に大きい。非常に簡潔にしかも懇切にまとめられた全巻一冊は176頁で,座右におぎ用にのぞんでひもとく者にも,はた又限られた短い期間にその全貌を読了せんとする者にも,此上なく便利で,ありがたいものであろう。初めに,頭蓋脳外傷の臨床知見の理解に必要な解剖と病理の基礎事項が,臨床上の根本理念と共に述べられる。ついで診断のための要件が総括的にまとめられる。それから,個々の病像が,経験された意味深い症例の系統的な展開を適宜に挿入して克明にのべられる。
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