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Ⅳ.てんかん様精神病
ここで議論しようとしている一般的でない精神病はてんかんに近縁なものである。この精神病の一部では症候像や患者の基本的状態や遺伝性においててんかんとの関係が明白に認められる。それはかつて私が詳細に記載した挿話性もうろう状態であって,既知のてんかん様精神病質者の挿話性不機嫌状態(渇酒症,俳徊狂,他の衝動性不機嫌)に連接するものである。Kleineによってわれわれの精神科での観察から記載された挿話性(周期性)睡眠状態並びに非常に短い睡眠発作を伴うナルコレプシーもこの近縁である。
挿話性もうろう状態は,てんかん者のそれのように持続性の短い平均6〜7日間の,多くは急速に出現し同じく急速に消失する意識混濁である。とは言ってもそのもうろう状態の程度はてんかんのようにつねに深くはない。意識混濁と共に―真性のてんかん性もうろう状態の際のように―往々他の症候も有しており,それによって挿話性もうろう状態の種々の型を区別できるのである。O. Binswangerがベルンの講演で発表した見解に対しては,こういった種々の型は決して特殊な明確に区別できる疾患を示しているのではなく,むしろもうろう状態のいろいろの変種を形づくっているにすぎないと言える。私は単純なこみ入っていない挿話性もうろう状態の他に,それらと衝動興奮,逃走,衝動性自殺企図,暴力行為―そのうち2度は強盗侵入―などを有する患者を知っている。またある患者の場合には前述した急性啓示精神病に類似した啓示と恍惚感情が出現したり,また錯乱性運動不穏や錯覚が意識混濁と結びついたり,またある場合には錯覚が説明思考や迫害思考と結びついたり自己関係づけと結びついたりして,急性幻覚症の後に起こる多種多様な病隊を形成したりする。更に,最近Stillgerが記載した症例のように精神運動性の症状がつけ加って出現する患者もある。
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