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この書物は,肝臓病学に関する図譜付き教科書といえる性格の本である.Hannover医科大学消化器科主任のF.W. Schmidt教授が主となり,E. Schmidt教授,W. Wallnöfer博士の3人で編集されている.とくにF.W. Schmidt教授は私が十数年前に暫くいたKassel市の有名な故Kalk教授のもとで,血清酵素学的診断法を多年にわたって研究していた肝臓病学の専門家である.
この書物の特徴は,著者らの序文にもあるように,肝疾患についてもっとも多くの情報を提供してくれる腹腔鏡所見や肝生検組織の光顕,電顕所見を主とし,臨床生化学的,免疫学的,生理学的方法でえられた肝機能検成績とその経過,肝シンチグラム,ソノグラム,血管造影像などを従として,相互の横のつながりをもって書かれていることである.いいかえると,各種肝疾患の病像が「マクロからミクロまで」1つの流れの中で,丁寧に書かれていることである.そのために,著者らは種々の検査方法によってえられた特徴的な所見を1つの総覧にまとめ,個々の病像については定型的で,そして平均的な所見を提示するように努力を払っている.たとえば,わが国の肝臓学会で問題になっている慢性肝炎の分類と持続性肝炎との関連を例にとっても,西ドイツの肝臓病学者で,あまり学問的主義,主張を表面に出さない平均的な考え方が欲しいわけであり,それとの比較によってわが国の分類の妥当性が正しく論じられるわけである.その際の西ドイツにおけるその領域における生の情報をこの書物が提供してくれている.そのほか,米,英においては用いられず,西ドイツにおいて長い間用いられてきているヘパトーゼ(Hepatose)の概念,脂肪肝肝炎(Fettleberhepatitis)の概念,あるいは各種肝疾患の成因論について理解するのにもまた,恰好の書物であると考えられる.その意味で,西ドイツにおける肝臓病学者の平均的な考え方が,研修医にも,一般臨床家にも,また肝臓病学の研究者にも十分理解していただける良書であり,わが国における肝臓病学との比較においても多くの情報を提供してくれる書物である.
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