カンファレンス
神経病理カンファレンス(1)
五島 雄一郎
1
,
松山 春郎
2
1慶応義塾大学医学部内科
2慶応義塾大学医学部病理
pp.738-745
発行日 1960年8月1日
Published Date 1960/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200971
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症例
63歳の男子で,職業は,関西の某大学教授。主訴は,嘔吐及び全身のTremorで,入院時は,本人の意識が,ほとんど混濁しており,詳細が不明の為,病気の経過につきそつておられた息子さんから,大体病歴を聞いたわけです。
昭和33年5月に,非常に疲労をしていたそうでありますが,ブラッセルに国際見本市があり,そこで話をするために出かけました。講演の際も,非常に疲労が強くて,同時にまた,歩行困難があつたということですが,坐つたままで,代講して話をしてもらつたということです。その後,5月の下旬にブラッセルの病院に入院し,6月始めに,突然意識障害が起り,それと共に全身の痙攣発作が起り,嘔吐が始まりました。この継続期間は不明ですが,このような発作が,入院後3ないし4回ぐらい繰り返して起つたそうです。その時は麻痺とか,あるいは言語障害はなかつたよ.うです。6月の末頃から食欲不振,嘔吐が起り,7月のはじめ頃には,再び激しい嘔吐と意識障害,痙攣,発作,視力障害が起り,その際,両上下肢の不全麻痺が起りましたが,視力障害は,1日ないし2日でもつて回復したということです。当時,ブラッセルの病院の診断は,脳血栓による脳軟化ということでした。この頃,阪大の吉田教授が,学界出席のためにヨーロッパにおいでになり,この方を診断されまして,そして,やはり脳軟化症として診断を下されております。
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